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祖父のしたり顔

孫『それって同じじゃない?』

祖父『違う!食べるために生きると生きるために食べるは似て非なるものだ』

孫『じゃあどう違うか説明してみてよ』

祖父『ったく最近生意気になってきおって…』

母親『夕飯できたから運ぶの手伝ってー』

孫『はーい!じゃあじいちゃんは生きるために食べなよ。僕は食べるために生きま~す』

祖父『いつかお前にも分かる…そう願うよ』

祖父が亡くなって10年になる。今の状況が祖父との断片的なやり取りを思い出させていた。

『そういえばあの話は有耶無耶になっちゃったな…』

俺はいわゆる一握りの人間しか食っていけないような道を選んでいた。当然親の反発を受け、その反応は予測していたものの、つい意固地になってしまった。それ以来親との関係は微妙なものとなっている。

正直こんなドラマみたいな展開の当事者になるとは思ってもみなかった。こんなにも現実の壁が分厚く、やるせなさを伴うなんて。ちっとも笑えない。ただ、それには全てを忘れさせる何かがあった。それに没頭していると寝食を忘れていた。

エネルギーの循環のようなものを感じ、このまま永遠に続けられそうな気になるほどだ。後に肉体のケアも必要だと身をもって知った。今なら祖父の言っていたことが分かる気がする。一瞬、祖父に気持ちが傾いたせいか祖父のあのしたり顔を想起し、懐かしくなった。

俺と祖父はよく将棋を指した。祖父は母親のお腹の中に手加減というものを置いてきたかのようだった。何事にも手を抜かず、徹底的に俺を叩きのめした。叩きのめした後はきまってあのしたり顔をするのであった。子供の頃はよくいじわるな枯れ木と思ったものだ。

『じいちゃんだったら今の俺を見てなんて言うかな…』

亡き祖父を想い、胸の内で対談を試みる。あのしたり顔で現れたときにはなぜだか涙が頬をつたっていた。

ペドロ

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