もしも、もしも聖人になってしまったら
彼らの大脳皮質に住まう聖人になってしまったなら
あなたの自由に影を落とす
おいそれと人を好きになることも出来ない
往来で歌うことも
中空を眺め笑うことも
確かなのは自分の現実感だけだ
それはあなたの心音であり
握った手の中にある少しばかりの汗だ
世の幻に目を奪われるなら閉じてしまおう
周りの声に合わせてしまうなら耳を塞ごう
芳しいものだけを辿って
嗅覚だけを頼りにして
芳しさが消えたのならすぐ次の目的地へ
なぜなら、全てを行えるあなたは必ずしも
全てを行いにきた訳ではないからだ
一つを極めることが善とも限らない
そこにはもう魅力が無いかもしれないのに
そこに居座ってしまうのは頭の発達である
技術は向上するだろうし、経験も積める
ただし、そこに本懐の気配は無い
嗅覚の発達は青図への架橋だ
この道程は凡庸で地味かもしれない
なあに特別に憩っている者は放っておけばよい
死の床で是非を問われるのはただ一人さ
彼らは凡庸に耐えられなかった
だから己の道を行く者よ、あなたは強い
頑強な脊椎を生やす者よ、悪童であれ
ペドロ