自分の意思がある。
対岸には世間がある。
そして渓谷には『常識』を祀った神殿があった。
自分の意思が世間で花開くには綱渡りが必要だ。
皆が巧く綱渡りを出来るとは限らない。
奇人変人の類いは最初から綱渡りなど諦めているか、自ら渓谷へ飛
誤って落下した者は地面に激突するかオベリスクに突き刺さった。
プラスチックな神が血に飢えたことは一度もない。
疑念を抱きながら渡る者もいたが、大抵は命を縮めるだけであった
疑念を持っても表に出すな。それは下等なやつのやること。
上等なやつは考えるのを止めよ、思考を停止せよ。
それが賢き者のあり方だった。
綱渡りの往復を止め、世間に馴染んだものは常識を強要し始めた。
それは正義であり、心強い盾だ。
自分の意思の側からすれば理不尽に思えた。
皆が言うのなら正しいはずだと言い聞かせる者もいる。
オベリスクの元の色を思い出せないのを頭の隅に追いやり、今日も
ペドロ