血のしたたる手で薔薇を持ち、笑顔を作るのは誰か。
その薔薇たちは艶やかで、どこか欲をかきたてる。
誰しも手に取らずにはいられない。
美しさが眼を潰し、棘が見えていない。
香しさが鼻を曲げ、判断を鈍らせていく。
代償を払い人はやっと薔薇を手放すようだ。
痛みがある種の目を覚まさせる。
それでも痛みという御者は次の薔薇へと連れていくだけだった。
それを繰り返し、世界は悪に満ちていると絶望する。
悪の充満が天の導きに変革するとき、棘の無い薔薇の存在を知る。
その薔薇は見つけるにはあまりに近過ぎた。
声はか細く、色は普通で、気づくのは不可能に思える。
派手な色、鼻腔を襲うような香りに惑わされていると見逃してしま
棘の無い薔薇は確かにある。
しかしどうやってそれを見つけられよう?
誰が見つけられよう?
私自身がその薔薇だったのだから。
ペドロ