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狂った蝶

みな蝶になりたい。

幼虫達は地面を這いたくなかったのかもしれないし、風になるのを夢見たのかもしれない。

とにかくみな蝶になりたかった。

一匹の幼虫の前に蝶が舞い降りた。

なにやら意味の分からない言葉を置いて去っていった。

その蝶は狂っていた。

その狂った蝶に出会ってから幼虫は得も言われぬ懐疑に囚われていた。

懐疑はやがて思案になり、気づくと幼虫は体を動かせないでいた。

いつの間にか殻が出来ている。

私はまださなぎになる準備ができていない。

恐慌状態のなか狂った蝶が頭をよぎる。

あいつのせいだ。

体は溶けはじめ、ついには一人称さえ溶けていた。

全てが混じり合い、上下が消え、昼夜も消えた。

意味だけが混在し、それを拾う者はいない。ゆえにさなぎは思惟であった。

様々であるなかに狂った蝶の言葉もあった。

『お前はすでに蝶である』

さなぎの中でそれは響き続けていた。

どれだけそうであったかは分からない。

変化は静止を歯牙にもかけない。

思惟であったものは理解となった。

さなぎに亀裂が入るのとそれは全く同時に起こる。

『私は蝶なのだと思い出した』

体が固いのがもどかしい。羽の動かしかたはとうに知っている。

狂った蝶がまた一匹。

聖(ひじり)に酔った蝶は見渡す。

木々に幼虫が蠢いていた。

狂った蝶の目にはまごうことなき蝶に映った。

みな蝶になりたい。

ペドロ

2 COMMENTS

ペドロ

らいおんさん超ありがとうございます!そういうのも面白いかもしれませんね。

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