そのキャンバスには一度として
同じ絵の具は使われていないのだけれど
何かを横に並べて検分出来るような要素は
全然無いのだけれど
優越感や劣等感が衰退したことはない
奇抜は所詮、相対的なものだ
ただ、個性というものはもう少し考察されるべきではないか
誰一人何一つとして同じ存在がいない
この感覚に襲われると
道行く人に対して奇妙な感動を覚えた
誰に対してもこの人は今ここでしか会えないのだと
そう思ってしまった
唯一無二の氾濫は比較を意識下に沈めてしまう
所得や容姿…出自や才能…
全てが鼻に付く要素だ
それらがただの特徴に変貌するなんて
みんなちがってみんないい、という現実はどこまで浸透したのだろう
亡き詩人の中にしか存在しないものだろうか
幼少の頃読んだ詩は道徳や慰めなんかじゃなくて
単なる事実であった
巷にある尊敬のかたち
この人のようになりたいと願うかたちは
見たいように見ていただけで
自分の英雄像を投影していたに過ぎないのだろうか
あるがまま『見る』とは尊敬に直結していた
座したまま世界をひっくり返す
解釈の膂力は計り知れない
ペドロ