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長い、長い塔を登っている。

登る前、そのあまりの高さに眩暈を覚えながら踏破してやると意気込んだ。

塔の内部には螺旋階段と同調するように倦怠と後悔が渦巻いていた

登れど登れど窓に映る同じ景色にうんざりしていた。

塔の内部には汗と疑念が生じていた。

果てのない塔でその者はやり尽くした。

後戻りという過去を捨て、成長という未来も捨てた。

その場で起きていたのは階段を一段一段上がるということだけであった。

その者は一段上がる毎に死んだ。

そして一段上がる毎に蘇ったのだ。

過去と未来を擲ち、今に浸かったその者は喜びに満ちていた。

幾度と目にした太陽が、月が、空がこんなにも美しいなんて…。

眼球があるだけでは駄目だったのだ。

目に心を宿せば同じ景色などに映るわけがなかった。

一段上がる毎に喜びに打ち震えた。

涙が溢れ、時として脚を止める程だった。

塔の内部には負と正で満たされていった。

それは塔には全て満ちていることを意味した。

その者はいつの間にか気を失っていた。

目覚めるとなぜか外から塔を眺めている。

身体が無いのに焦りや恐れがない。

やがて自我らしきものまで消えていった。

そこには愛だけがあった。

ペドロ

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